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日本対トリニダード・トバゴ

ついに新生日本代表の船出の日がやって来た。
相手は先日のワールドカップのグループリーグで
大きな番狂わせをやってのけたトリニダード・トバゴ。
新たな日本代表の強さを測定するには
持って来いの対戦相手である。
日本はGKに神・川口。
DFは坪井、闘利王、田中隼磨、駒野
MFに鈴木啓太、長谷部誠、山瀬功治、三都主アレサンドロ
FWには田中達也、我那覇和樹と
MFとFWにはドリブルの得意な選手や運動量豊富な選手が揃っている。
そして監督はイビチャ・オシム。
彼のこの試合の采配によって今後の日本代表を占う事が出来るだろう。

試合開始から日本は積極的に攻めチャンスを掴む。
「とにかく走るチーム」という目標の通り
動きに動き、トリニダード・トバゴの出鼻を挫く。
中盤から前線へ早いダイレクトなパスで
豊富な運動量を誇るFWが相手の裏を取るという
この戦術が機能しており、非常に面白い。
DFにおいても早い段階から潰しにかかり
しっかりと相手のチャンスを潰している。

この試合、トリニダード・トバゴが不調なのか
日本が最高に良いのか解らなくなるほど
日本のシステムが機能し、最高のパフォーマンスを発揮しており
ここまで安心して見られる日本代表の試合は久しぶりである。
特にFWの田中達也の動きが良く、ワールドカップで怪我のため
出場出来なかったのが、本当に悔やまれる程である。
他の選手もしっかりと自分の仕事をし
空いたスペースには必ずフォローに入っている。

そして前半16分その動くサッカーで相手のファウルを誘い
ペナルティーエリア外のゴール正面でFKを得て
そのFKで三都主が目の覚めるような美しいシュートで
日本が幸先の良い先制点を挙げた。
その得点の時も、闘莉王が三都主にしっかりと
壁の穴を示し、本当に素晴らしい得点である。

この時点で私としては舞い上がっており
もう最高の気分である。
その後も日本は大いに攻め、チャンスを作る。
とにかく選手同士の距離感が良く
ボールに触っていない選手が相手を誘い、そして崩す。
文句なしの素晴らしい出来である。

そして前半22分、またも三都主が非常に長い距離を走り
それをしっかりと見ていた駒野が美しいパスを送り
完全に抜け出した三都主は相手GKを交わす
芸術的なループシュート。
これが決まって2-0と日本はリードを広げる。
とにかく素晴らしい試合であり
ここまでは最高の船出と言って問題ないだろう。

心配されるのは、ここまで動いている為
選手のスタミナだろう。
後半になって運動量が落ちたところで
こういうシステムが機能しなくなるのは
良くある話であり、その点がクリアされれば
パーフェクトなチームとなるわけである。
また、リードを奪ったことにより安心感が生まれ
そこから少し気が緩んだところに
つけ込まれると言った事もあり
この部分にも気を付けたいところである。

しかし日本は気を緩める事もなく
引き気味の相手を崩す為に緩急をつけ
素晴らしい試合運びを展開する。
本来なら攻撃的なチームであるトリニダード・トバゴだが
この試合では全くその攻撃が見られない。
日本のDFが攻守に渡りしっかりと機能している証拠である。
今までも、攻守のどちらかが良い事はあったが
ここまで攻守共に良い試合は無かった。

この攻守に渡る活躍のポイントとなるのは
攻守の切り替えのスピードである。
闘莉王や駒野、坪井が攻撃に参加する時には
田中隼磨、鈴木啓太などの他の選手が
しっかりとその穴を埋めており
また、相手にボールが渡ってしまった時には
彼らが戻る時間を中盤の選手だけでなく
前線の選手までもが、相手に当たり時間を稼いでいる。

2点目の得点の後から、トリニダード・トバゴが
引き気味に守っており、日本は攻めあぐねる時間があったが
それでも相手の縦のパスをしっかりとケアし
攻撃をしながらもディフェンスはしっかりと集中しており
時折運動量の落ちる部分もありはしたが
それでも他の選手がカバーをして回復を図り
前半は最高の形で折り返す事が出来た。
このまま後半も素晴らしい試合を展開して欲しいところである。

迎えた後半、日本は選手の交代はなく
そのままの布陣で後半に臨む。
後半開始直前から雨が降っており選手のスタミナを
奪ってゆく事になるが、この悪条件でも
日本の優位に変化がない事を祈りたい。

日本のキックオフで始まった後半だが
前半同様に豊富な運動量でトリニダード・トバゴを圧倒。
ここまで素晴らしい試合を見せられると
あのワールドカップは何だったのだろうと考えてしまう。

しかしトリニダード・トバゴも、ワールドカップで
スウェーデン、イングランド、パラグアイと言う
トリニダード・トバゴに取っては死のグループで
勝ち残った実力を持つチームであり
後半は多少立て直してきている。
ただ、そこにも日本のシステムは柔軟に対応し
前半ほどのボールキープはないが
しっかりと攻撃の芽を潰しており、安心して見ていられる。

そして後半10分、疲れの見える日本代表に
新たな力を入れるべく、山瀬に代わって小林大悟を投入。
やはり動き回っている日本は疲れも見え
そこにつけ込むトリニダード・トバゴを
もう一度押さえ込むべく、良い流れを生んで欲しい。

その小林大悟の投入が大当たりで、入ったばかりの
小林大悟からいきなりのチャンスが生まれるなど
良いリズムが生まれつつある。

しかしその直後の後半16分に坪井が
足に違和感を訴えて無念の交代。
代わりにDFの栗原が入る。
ここまで好調だった坪井が下がってしまうのも残念だが
それよりも、彼の足の状態も非常に気になるところである。

この残念な流れを断ち切るためにも
ここで追加点が欲しいところだが
トリニダード・トバゴもそこは譲らず
しっかりとこのチャンスにつけ込んでくる。

ただ、日本もこの流れを断ち切る術を心得ており
後半から入った小林大悟がいきなり
ミドルシュートを放つなど、日本の動きに慣れてきた相手に対し
嫌な攻撃を展開する。

そして後半19分、ここまで素晴らしいプレーをしたいた
我那覇に代わり、佐藤寿人を投入。
ワールドカップで代表選考に最後まで残り
良い成績を残していた選手なだけに、ここは期待したい。

この時点で雨は本降りとなり、大粒の雨が降り注ぎ
ピッチは非常に辛い状況となっている。
この最悪の条件でスタミナを奪われるのは
運動量豊富な日本には辛い時間となるだろう。

しかし代わった佐藤の切り裂くようなドリブルで
いきなりのチャンスを得るなど、日本はこの苦しい時間を
何とか乗り切っている。

その後も日本は悪条件もあり、日本の運動量は落ち
中盤だけでなく、後衛でも少々ほころびが見えてきており
何とか修正したいところ。
後半28分には長谷部に代えて中村直志を投入。
穴の空き始めた中盤をもう一度リフレッシュさせる戦略である。
この試合では交代枠は3人ではないので
日本はこれが4人目の交代となる。
ただ、坪井の交代は負傷での予想外の交代であるため
ここまでは公式試合での3人のカードと想定して
差し支えはないだろう。

トリニダード・トバゴに攻められるも
攻撃の面では佐藤寿人が入った事により
スピードのあるドリブルでの突破から
ダイレクトでつなぐ三都主などの活躍もあり
運動量が落ちていても攻撃では素晴らしいプレーが続く。

そして後半40分、ここまで大回転の活躍だった
三都主に代えて坂田大輔を投入。
オシム監督も三都主に対し、最高の表情で
そのプレーを讃えているようであった。

試合は4分のロスタイムに突入。
さすがの日本も大分運動量が落ちており
どうにか持ち堪えているが、トリニダード・トバゴは
このチャンスにと大いに攻めかかる。
しかしそのトリニダード・トバゴも運動量が
落ちてきているのは同じであり
足に痙攣を訴える選手も出てきていた。

運動量だけでなく、この疲れの中では
集中力などの精神面でも疲れが見えるもので
日本のスタメンの選手に小さなミスも見られる。
そのミスはどうやらオシム監督にも見られるようで
このロスタイムに入ったところで
何とベンチを空けてトイレに。。。
そしてそのトイレに行ったまま試合は終了。
このあたりは非常に笑える。

結局試合は2-0で日本が快勝。
特に前半は本当に素晴らしい試合だった。
それだけに厳しい批評をするとすれば
後半の中盤以降のプレイは少々問題だろう。
やはりこれだけの運動量があれば
スタミナはもう少し必要となるだろう。
ワールドカップでのダークホースである
トリニダード・トバゴが相手とはいえ
やはり世界トップレベルの相手ではない。
そしてこの試合はホームでの試合であるため
これがドイツワールドカップでの
ブラジルとの試合だったらどうだろう。
そう考えるとやはりまだ改善の余地はある。
特にリードしている安心感の中で
運動量が落ち、精神面でも疲れが見えれば
世界トップレベルのチームが相手なら
確実に得点されている場面が幾つもあった。
そして交代枠もこの試合では5人使用しており
公式試合では3人となっている。
つまり親善試合であるため、ルールに助けられた部分も
大きいわけである。

しかし、それでも前半の試合内容が
素晴らしいものであった事には変わりはない。
監督の采配とメンバー選出によって
ここまで実力が変化するモノかと実感してしまう。
正直、前の日本代表だった小野や玉田、宮本、小笠原
中澤といったメンバーが不在なのには不安があった。
また、前の日本代表が長い間大きな入れ替えが無かった為
彼らばかりに注目し、Jリーグで活躍する
今回のメンバーには心配があったが
この試合でそれは一掃された。
今回のG大阪や千葉の選手が招集出来ず
海外組が不在の中でここまでのパフォーマンスを
叩き出されては、もう文句のつけようがない。
後になって言うのはあまり好きではないが
やはりジーコ監督は監督としてのスキルは少々足りなかったと
言わざるを得ないだろう。

とにかく爽快な試合で新生日本代表の船出には最高の試合となり
次の初の公式試合となるイエメン戦では
海外組や今回招集出来なかった国内組のメンバーが加わり
本当に楽しみな試合となりそうである。
次のイエメン戦、大いに期待して待つ事にする。
素晴らしい最高の試合であった。